二匹は夜更けに家を出た。
いつもの坂道を下りて通りに出るとタクシーを拾った。
行先を告げると、初老の犬の運転手は二つ返事で、
あのイタリアングレイハウンド3兄弟が切り盛りしている憩いのBARですねと。
5,6分も走っただろうか車は寝静まった住宅街の路地の中を2,3度向きを変えた所で
ほのかにオレンジ色の明りの灯る家の前に滑り込む様になだらかに停車した。
実に熟練の、そして心地よく客をエスコートする運転手に
憩いのBARに出掛けるに相応しい選択をしたことに二匹は気分が良い。
ようこそ!J&J
やあ!みなさんお久しぶり。
ひととおり挨拶を終えると、急に身体の力が緩み小さなあくびが出た。
オニールマスター:「さてと、お飲物は何からに致しましょう?」
ジョイ兄:「僕はスプマンテ」
ジュラ妹:「じゃあ私も」
オニールマスター:「ご用意させていただいたのを我々も頂くと言うのは?
一同:「賛成〜乾杯〜!」
暖かい香りと、食べ物の滋養が身体の隅々までほぐしてくれる。
歓談の時はゆっくりと過ぎた。
それにしてもこのBARの心地よい緩慢な時の流れは、この一杯で終わろう!
を何度も繰り返させてしまう。
3兄弟:「ところでジョイ兄!青春とはなんですか?」
ジョイ兄:「青春とはその歳々をエンジョイすることだよ。」
こんな会話が何通りか繰り返され、憩いのBARの日付は変わろうとしている。
人間たちの邪魔にならない会話はBGMに混ざり合って、次第に遠くに聞こえるようになる。
そしてゆったりと、まるで世界のここだけが時間が止まったかに思えてくる。
憩いのBARのオレンジ色の明りのなかで。
と、その時
人間たちの動きが慌ただしくなる。
ジョイ兄:「行くぞ!ジュラ急ぐんだ。誰かうずくまってる!」
ジュラ妹:「マズイ!うちのお春丸だわ!ビニール袋に今宵のごちそうを吐きだしてる。」
ジョイ兄:「やばい!Uがお春丸を叱り始めた〜!」
こうして、憩いのBARでのひとときは、意外な顛末で幕を閉じたのさ。
ジョイ兄:当ブログにお越しの皆様、この度はJ&J家のお見苦しい失態をお見せしてしまい
申し訳ありません!